みなさん こんにちは 健康と幸福を促進する作業療法士のblueskycarpです。
作業療法士は対象者のポジティブな感情や意欲を引き出し健康や幸福につながるよりよい行動や習慣の形成を支援します。
しかし行動のための欲求や感情、意欲が乏しく、やりたいことがない、ずっと寝ていたい、やりたいことが分からないといった対象者も臨床では存在します。
そういった対象者に対してはどう動機付け、ポジティブ感情に基づいたよりよい行動をどう引き出せばとよいのでしょうか?
そこで知っておきたいのが今回紹介するジェームズ・ランゲ説=感情の末梢説です。
この説は人の感情や意欲の起源について一般的な常識を覆すものです。
一般には「楽しいから笑う」「悲しいから泣く」と言うふうに感情が行動に先立つものと理解されています(これはキャノン・バード説=感情の中枢説と言われています)。
しかしジェームズ・ランゲ説では「笑うから楽しい」「泣くから悲しい」という具合に体の反応、行動が感情に先立つと説明します。
この説を裏付ける実験としてペンを二通りの口の形で咥えて同じ内容の漫画の面白さを評価してもらう実験があります。
一方はペンを縦に咥えてもらう条件です。これは表情としてはネガティブなもの、不満な表情のグループです。
もう一方はペンを横に咥えてもらいます。これは表情としてはポジティブなもの、口角が上がり笑顔に近い表情のグループです。
実験結果では後者、ペンを横向きで咥えた方がより漫画をポジティブに、面白く感じるという結果でした。
この実験では同一の漫画を読んでいるにも関わらず、表情筋の使い方、つまり行動のあり方によって漫画の面白さ、感情が変化することを示し、ジェームズ・ランゲ説を裏付けるものとされています。
またジェームズ・ランゲ説を支持するものとして「パワーポーズ」というものも提唱されています。
社会心理学者エイミーカウディらによる研究で、姿勢によるストレスホルモン、ネガティブ感情の影響を2つのグループで確認しました。
手足を開いたり胸を開く堂々とした姿勢を1分間とるグループ(ハイパワーポーズ群)、そしてもう一方は手足を閉じて猫背姿勢を1分間とるグループ(ローパワーポーズ群)との間でストレスホルモンの分泌量を比較します。
結果はハイパワーポーズグループでストレスホルモンが軽減するという結果になりました。
これも姿勢といった体の反応、行動のありようによって、ストレスの感じ方やネガティブ感情が変化すること示しており、ジェームス・ランゲ説を支持するものとされています。
ジェームズ・ランゲ説を知っておくことは、対象者の感情や意欲の起源を身体、行動ベースで捉えることなります。
このことは対象者の感情や意欲の存在を前提としてよりよい行動のための動機付けをするよりも、まずは意欲が乏しくとも対象者のできることから介入する、ポジティブな機能を活用する、そしてまずはできる活動に取り組んでみると中で、後付けという形で対象者の意欲や欲求が出てくることを期待して介入していくことになります。
作業療法は対象者の価値観や思いといった主観的側面に基づく支援することを大事にしていますが、ジェームズ・ランゲ説に基づけば主観的側面を引き出すためにも身体・行動ベースから始める関わりも重要になると考えています。
参考文献