現在ベストセラーとなっている書籍「シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成」を読みました。
AI×データ時代に起こる変化と、それに対応するための日本の資源や人材の現状分析と課題、そして未来のあるべき人材育成と国、生活のあり方について客観的データにもとづいて 述べられている書籍です。
今回は上記の書籍から個人的に目に止まったキーワードに基づいて、これからの作業療法士に必要な能力について述べてみたいと思います。
キーワードは「ヒューマンタッチ」「デザイン」「異人」です。
AIによって「情報の識別」「予測」「目的が明確な活動の実行過程」といった作業は自動化されて、今後それは指数関数的な変化が5〜10年の間に起きるとされています。
現在でも
顔認証、翻訳、音声入力といった視覚や音声の「情報の識別」に基づく領域
現在のデジタルマーケティング(アマゾンやユーチューブでのオススメ商品や動画)におけるヒトの意図を読む技術、情報と意図のマッチング技術といった「予測」の領域
自動運転を代表する「目的が明確な活動の実行領域」
といった領域でその変化を感じれます。
すべての産業のAI×データ化し、情報処理の仕事の多くが自動化する一方で機械にできない人間的な接点=ヒューマンタッチな領域がこれまで以上にビジネスでの価値創造、価値提供の中心となるとしています。
そしてヒトは合理性を求める一方で、ヒトの温かみ、人を通じた価値を大事にする生き物であり、ヒトにしかできないこだわりや温かみのあるサービスに対する価値が高くなるとしています。
作業療法の領域も過去のビッグデータに基づくAIの情報処理によって最適な目標設定やプログラムの提示がなされるでしょう。
しかしそれを具体的に提供し実現するにあたっては、療法士としての問題や強みを見抜く能力、対象者の状況に応じて課題の難易度を調整する能力と引き出しの多さ、そして対象者を動機付けるためのコミュニケーション能力といったヒトならではの能力や技能が不可欠になります。
特にコミュニケーション能力については「ヒューマンタッチ」な領域として、療法士のヒトとしての魅力や心地の良い、丁寧な接触技術(ハンドリング)など非言語的な要素が、その人がもつ個人としての価値の創出につながるのではないかと考えます。
次にAI×データ時代の人材について著者はこれまで求められていた人材と比較して「異人」として次のような人材を提案しています。
●みんなが走る競争社会で強い人 → あまり多くの人が目指さない領域のいくつかでヤバイ人
●科学・工学・法律・医学など個別領域の専門家 → 夢を描き、複数の領域をつないで形にする人(課題×技術×デザイン)
●自分でなんでもできるすごい人 → どんな話題でもそれぞれ自分が頼れるすごい人を知っている人
上記の人材おいては特にAIが処理した情報の中から新しい問題や課題を見つけだし、そしてそれを複数の領域と人をつないで新しい未来や解決を創造できる「デザイン」能力が求められるとしています。
そしてそのための素養として人が群がる領域ではなく、独自性や質的な違いを生み出せる領域を持つことがこれからの時代、価値を生み出せるとしています。
作業療法士の領域においても、これまでは医療や福祉という範疇(群がっている)から職域を拡大し、教育、産業、行政、まちづくり、予防領域といった新しい領域でのソリューションを他領域の人たちとコラボし、提案・実行できる人材とそのための能力がますます求められるのではないかとも考えます。
さらに他領域の人とコラボし新しい未来をデザインするため、SNSを活用し、作業療法に関する情報の発信や個人の独自性をアピールできる領域の開拓が必要であると考えています。
「シン・日本」は近未来を想定したキャリア形成を考える上で、そして作業療法の世界、領域をメタな視点で捉える上で、個人的にはとても有用な書籍でした。
ぜひみなさんも、それぞれで活躍する領域を想定して、自分がこれから何を学ぶべきか、準備して行動化すべきか考える材料として、「シン・ニホン」を読んでみてはいかがでしょうか?