作業療法士のためのポジティブ心理学15ではエンゲージメント、フロー体験を取り上げます。
「エンゲージメント」とは「内発的に動機づけられた活動に完全に没頭している状態」を意味します。
ポジティブ心理学の提唱者セリグマンによる幸福・ウェルビーイングの理論(PERMA理論)において、幸福たらしめる要素として挙げられています。
人はまだ起こっていない未来への不安や過去の出来事への執着に思考が囚われがちになります。
これをマインドワンダリングといい、幸福度を下げることが研究で実証されています。
一方で今現在、目の前の活動やあり方を意識的に取り組めている状態をマインドフルネスといい、幸福度を高める要件とされています。
つまりエンゲージメントはマインドフルネスの状態で活動に取り組めていると言えます。
さらに心理学者のミハイ・チクセントミハイはエンゲージメントの状態にある時の体験を「フロー体験」と表現しました。
チクセントミハイはフロー体験の特徴を7つ提唱しています。
①活動のゴールが明確で進捗状況がすぐわかる
②完全に集中している
③行為と意識が融合する
④自己の認識や自意識を喪失する
⑤活動へのコントロール感、統制感がある
⑥時間が歪む
⑦活動すること自体が自己目的化する
そしてフロー状態に入るための条件は「目標」「挑戦」「スキル」の3要素であるとし、フローチャンネルという概念を提唱しています。
活動をすることの目的と到達点が明確であり活動の難易度が「簡単すぎず、難しすぎず」であることを意味します。
活動の難易度が高すぎると不安や心配が生じ、活動に集中できなくなります。
一方で活動の難易度が簡単すぎると、物足りなさから退屈を感じ、同様に活動への集中力は低下してしまいます。
つまり不安と退屈、活動の難易度と人のスキルがバランスを取れる挑戦的な活動を行うことがフロー体験をもたらすとしています。
リハビリテーション、そして作業療法の場面は、挑戦的な活動への取り組みがまさに展開されています。
病気や怪我でできなくなったことを再びできるように、取り戻したい生活、日常に向かって、対象者と二人三脚での歩みが展開されます。
対象者も、作業療法士も無心になって今の活動に取り組めている時、アリストテレスの提唱したユーダイモニアに近づいていると言えるのではないでしょうか?
参考文献