作業療法士のためのポジティブ心理学⑥では、ポジティブ感情を増やし、ネガティブ感情に適切に対応できる方法についてまとめ、作業療法との接点について述べてみます。
前回作業療法士のためのポジティブ心理学⑤でヒトには本能的にネガティブ感情に引き寄せられる傾向、「ネガティブ・バイアス」を持っていることを紹介しました。
したがってポジティブ感情を増やしネガティブ感情に対象するためには、本能に逆らう形で、意識的な取り組みが必要となります。
その取り組みとして提唱されているものに「マインドフルネス」と「セイバリング」があります。
マインドフルネスについてはよく知られているように「今、ここの気持ち」をしっかりと感じようとするものです。
ヒトはどうしても過去への執着や未来への不安といったネガティブ感情に注意が引っ張られ(自動思考)、今現在への取り組みや気持ちに対してうわの空状態になりがちです。
マインドフルネスでは瞑想などの手段を使って意識的に注意を「今現在」に引きつけるトレーニングと考えてもいいでしょう。
マインドフルネス瞑想では自身の呼吸(呼吸瞑想)や身体の緊張(ボディマッピング)に意識を向けるやり方など様々な方法が提唱されていますが、日常何気なくやっている行動(食事、歯磨き、着替え、歩くなど)の所作一つ一つを心の中で実況中継するように意識的に取り組むことも注意を今ここに引きつけるトレーニングとなります。
次にセイバリングです。
セイバリングは「過去や今現在の心地よい体験、ポジティブな体験に意識的に注意をむけて、その体験をはっきりと味わう」というものです。
日常に当たり前にあるポジティブな感情、例えば美味しい食事、仕事終わりの一杯、布団の心地よさ、家族の笑顔など多くは五感で感じている快刺激(ヘドニア)を意識的に味わい、思い出すといった取り組みです。
ポジティブ心理学のクリストファー・ピーターソンは毎日3つのいいことを書き出すというワークを習慣化することで、幸福度が向上するといった研究成果を報告しています。
1日の終わり、就寝前にその日あったいいこと、心地よかったこと、嬉しかったことなどを意識的に思い出すことでポジティブ感情を感じる神経回路を強化することにつながります。
作業療法の対象者は、心身の苦痛や障害による困難さで生活の中にある当たり前の快刺激に注意が向けにくくなっているかもしれません。
逆に日常を病気や障害で失ったことで、日常にあった当たり前の快刺激に意味を見出す対象者もいるでしょう。
また作業療法で経験する意識的な取り組みが、「今現在」に注意を向けることで病気や障害に起因したネガティブ感情から一時解放される経験にもつながると考えます。
作業療法士は対象者の意識的な取り組みの中から幸福を共に感じ、見つけ出す支援ができると考えてます^_^
次回作業療法士のためのポジティブ心理学⑦では、さらにネガティブ感情にうまく対処するための考え方、方法について紹介していきます。^_^