人は誰でも幸せになりたいと願って生活しています。
アリストテレスは、幸福について「生きるための意義、人間存在の究極の目的」としています。
しかし幸福は長続きしないという特性を持っています。
特に快楽に基づく幸福は持続しません。
快楽に基づく幸福とは、生理的欲求や願望が満たされた時に生じる一時的な快感情です。
晩酌の喜び、恋人ができた時の喜び、結婚した時の喜び、家を立てた時の喜び、ほしいものが手に入った時は喜びや嬉しさは残念ながら持続しません。
心理学による研究では、例えば結婚による幸福を感じる期間は約2年で、そのあとは通常の幸福度、その人のもつ設定値に戻ってしまうことが報告されています。
また特に簡単に手に入る快楽ばかり追い求める行動や生活からは、返って失望や虚しさを感じることさえあります。
ポジティブ心理学に基づく研究によれば幸福が持続しない理由は「快楽順応」という力が作用しているとされています。
要するに慣れです。人は知覚や生理学的な変化にすぐに適応、順応する性質があります。
一般に幸福をもたらすと考えられている富、家、財産、美しくなること、美人と一緒にいること、結婚、健康といった好ましい変化さえも、人は慣れてしまいます。
では生理的欲求や願望に基づく幸福を持続させるためにはどうすればいいのしょうか?
ポジティブ心理学者のリュボミアスキーは感謝には快楽順応を防ぐ効果があると提案しています。
人生に起こる「いいこと」を当たり前のように思わないなら、感謝することで「快楽順応」の影響にも抗うことができるとしています。
自然災害、自己、病気などで平穏無事な日常が失われた時に気づく幸福があります。
幸福には運、偶然という要素もありますが、日頃順応して気付かなくなった日常の中にある幸福に目をむけ、感謝することが幸福を持続させるコツであると考えています。
最後に、アリストテレスは「幸福は徳に基づく理性(ロゴス)による行動である」と言っています。
感謝という行為、行動も徳に基づく理性の行動であると考えます。
理性、つまり意志の力で幸福を持続させる努力が必要です。
参考書籍

- 作者: ソニア・リュボミアスキー,渡辺誠,金井真弓
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2012/02/16
- メディア: 単行本
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