「身体介助がうまくできず腰を痛めてしまった」
「身体介助に自信がもてない」
「患者さんの残存能力を活かした身体介助ができない」
回復期で働く作業療法士として看護、介護スタッフ、そして患者さんの家族に生活動作の介助方法を助言させていただく機会があります。
身体介助は患者さんの障害特性、ボディメカニクス、環境など様々な要素を考えて実践するものであり、とても高度な判断と技術が求められるものであると考えています。
したがって身体介助を上達させるコツは、ずばり「効率を求めない」ということになります。
僕は身体介助実践における優先順位を以下のにように考えています。
①安全性:患者、介助者お互いの身体を痛めさせない、痛めない
②快適性:患者、介助者お互いに苦しくない、窮屈でない、つまり楽である
③促通性:患者の残存能力を最大限に引き出し利用する→機能維持、機能回復の促進
④効率性:ほかの業務に支障のないようにはやくできる
①〜④の項目についてすべてを満たして介助することが最終的な身体介助の目標ですが、現実はそう簡単にはいきません。
特に①は医療者としては当たり前の最低要件ですが、②③を実現するためには④は犠牲にしなくてはなりません。
④を優先すれば①〜③の要件を満たすことが難しくなり、結果的に患者さんの身体を傷つけたり、自身の体も痛めることになります。
なおかつ患者さんの持っている能力を発揮する機会を奪うことになり、結果として患者の回復や自立支援を妨害していることになります。
そして結果として介助者の技術の向上、成長も難しくなります。したがって①〜③と④は基本的には相反する要件となると考えています。
特に病棟、生活場面が身体介助の現場である看護・介護スタッフの方々は限られたマンパワーの中で集団として患者さんの安全と活動を支援しなければなりません。
特に食事場面やトイレ誘導のため起居移乗の介助、入浴介助、夜勤帯の体位変換の介助などは少ないマンパワー、限られた時間の中で身体介助を実施せねばならず効率性が優先される傾向にあるのが悲しい現実であると捉えています。
そこで次のような提案をすることにしています。
夜勤帯で仮に10人の患者さんの食事誘導のための身体介助が必要であったとします。
10人すべての患者さんに先にあげた身体介助の優先項目を満たすことは時間的に難しいでしょう。
まずは1人の患者さんから効率性を犠牲にした介助を丁寧に実施してみる。
その1人の患者さんに提供した介助技術の蓄積が、少しずつ介助者の介助技術の上達につながり、さらには患者さんの自立支援、回復に貢献することになります。
身体介助は高度な技術を必要とするものです。一朝一夕に上達するものではありません。
身体介助上達のコツは効率を求めない医療者個人、そしてその個人を支える組織の姿勢にあると考えています。
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