2018年4月に発刊された慢性疼痛ガイドラインのリハについてその要点と、作業療法との接点についてまとめます。
①慢性疼痛に対するリハの第一選択は運動療法である
一般的な運動(有酸素運動、筋トレ、ストレッチ)、またモーターコントロールエクササイズ(体幹の深層筋のコントロールトレー二ング)、ヨガ、太極拳、気功、ピラティス、ラジオ体操の実施が推奨されている。
②物理療法、徒手療法は積極的な実施の推奨はされない
いずれもRCTの不足、サンプルサイズの不足、結果の不均一性などの要因によってエビデンスの質が低いため、推奨度が低くなっている。
ただ過度な依存にならないことを前提に運動療法を実施する前のコンディショニング(動きやすい条件づくり、運動しやすいきっかけ)としての有効性は否定しない。
③運動療法と心理的アプローチ(認知行動療法、患者教育)の併用実施を推奨する
慢性疼痛は心理社会的要因が複雑に関与しており、認知行動療法(CBT、マインドフルネス、ACT)の有効性が確認されている。
痛みに対する認識と対象者自身の統制感を高め、行動変容につなげる(運動の習慣化、活動レベル・QOLの向上)ことが重要である。
⑤集学的リハ=チームアプローチの実施が強く推奨されている
慢性腰痛、繊維性筋痛症のシステマティックレビューからチームアプローチによる多角的な集学アプローチが推奨されており、特に運動療法と認知行動療法を含んだものが推奨されている。
ガイドラインの内容をまとめると、慢性疼痛を訴える身体末梢に対する受身的な関わりだけではなく、下降性疼痛抑制が働く能動的、患者参加型の関わりが重要であるといえます。
作業療法は、解剖学・運動学・生理学に基づいて末梢組織に生じている痛み(侵害受容性疼痛)に対応しながら、その痛みで困難となっている作業に焦点を当て、その作業の実現を心理社会的にサポートできる方法、存在であると考えます。
心理社会的にサポートを促進するためには下降性疼痛抑制のシステムが機能する対象者の価値に基づく活動や、作業への参加が重要であると考えます。
参考文献
厚生労働省 慢性疼痛対策ページ
慢性疼痛ガイドラインPDF
https://www.mhlw.go.jp/content/000350363.pdf