ひとの身体には痛みを抑制させる仕組みが備わっています。
中枢(大脳、脳幹)の活性化によって、脊髄後角での痛みのシナプス伝達を抑える仕組みです。
これを下降性疼痛抑制といいます。
中枢の活性化は、考える、見る、聞く、話す、読む、触れる、身体を動かすことなどで生じます。
実験的に中脳中心灰白質、体性感覚野を電気刺激すると、脊髄後角で痛みを伝えるシナプス伝達が抑制されることが報告されています。
臨床的には(痛みが生じない身体部位への)触れること、動かすことによる刺激が感覚繊維であるAβ繊維で脊髄から体性感覚野に伝達されます(後索-内側毛帯路)。
すると大脳および脳幹を下降する経路からノルアドレナリン、セロトニン、GABAといった内因性鎮痛物質が放出され、脊髄後角に作用することで痛みの伝達を抑制することになります。
作業療法は身体運動はさることながら、課題志向的に目標に向かう活動、意味のある作業に取り組みます。これはまさに中枢の活性化を図ることになり下降性疼痛抑制をいう仕組みが刺激されることになります。
生理学的に考えると作業療法は下降性疼痛抑制を効果的に駆動できる介入であると考えられます。
対象者の痛みの軽減に、作業療法を通じた下降性疼痛抑制をしっかり促通しましょう^_^
次回、作業療法士のための痛み学⑦では臨床でよく遭遇する筋肉の痛みに焦点を当てて、その理解と対応についてまとめてみます。
参考文献

- 作者: 松原貴子,沖田実,森岡周
- 出版社/メーカー: 三輪書店
- 発売日: 2011/05/30
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