神経障害性疼痛は、傷ついた末梢神経の、痛み刺激によらない、普通でない痛みです。
侵害刺激がなくても、何もしなくても痛みを感じます。
末梢神経が外傷で切れる、傷つく、ウイルス感染(帯状疱疹)、代謝異常、血流障害などで発生します。
痛みを伝えるAδ繊維、C繊維は通常何も刺激がなくても常に少ない頻度で自発的に発火し脊髄後角に情報伝達しているとされています。
神経損傷がない時は触圧覚を伝えるAβ繊維の自発的な発火もあるので、太く神経伝達の速いAβ繊維からの情報が優位に伝わることによってAδ、C繊維からの発火情報は抑制されて、脊髄後角に伝わらないとされています。つまり痛みは感じません。
しかし神経損傷によって触圧覚を伝えるAβ繊維も含めて障害され、痛みを伝えるAδ、C繊維の自発的は発火(または異常な発火)による情報が脊髄に優位に伝わることになり、何もしなくても痛いといった状態になるとされています(除神経後疼痛)。
したがって神経障害性疼痛は末梢神経全般の損傷になるため感覚障害、筋力低下を同時に生じることになります。
そして神経障害性疼痛の痛みは、日常で経験しない痛みであることが特徴です。
「経験したことのない痛み」「普通でない痛み」という表現で訴えられるとされています。
具体的には「刺す、焼ける、電気が走る、締め付けられる」などと表現されます。
神経障害性疼痛に対して作業療法士としてできることはなんでしょうか?
損傷した末梢神経を修復することは作業療法士にはできません。
ただ末梢神経から脊髄後角に送られてくる痛覚情報をコントロールし、苦痛を軽減させることは可能かもしれません。
コントロールするためには下降性疼痛抑制というメカニズムを理解する必要があります。
次回作業療法士のための痛み学⑥では、痛みをコントロールするシステムとして下降性疼痛抑制についてまとめていきます。
参考文献

- 作者: 松原貴子,沖田実,森岡周
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