今回は痛みを持続、慢性化させる要因となる末梢性、中枢性感作についてその理解と対応についてまとめます。
「感作」とは「敏感な状態」を意味します。
そして痛みのセンサーである自由神経終末の閾値が低下している状態を「末梢性感作」といいます。
怪我の直後で傷口に触れると痛いのは、末梢性感作が発生しているからです。つまり自由神経終末が敏感になっている状態です。
また怪我をした部位に炎症が生じている場合は、その部位に発痛物質が産生されます。この発痛物質の存在も痛みを持続させ末梢性感作を引き起こす要因となります。
そして末梢性感作による痛みが持続することで、「中枢性感作」が発生します。
「中枢性感作」は脊髄後角にある2次ニューロンの感受性が亢進している状態です。
特に脊髄にある2次ニューロンであり痛みと触覚の両方に反応する高作動域ニューロン(WDRニューロン)の感受性の変化やAβ繊維(触圧覚の神経繊維)の発芽によって、触刺激を痛みに感じるようになります。
脊髄後角の感受性の亢進によって「痛くない刺激を痛く感じる」「弱い痛みを強く感じる」「何もしなくても痛い」「周辺も痛い」といった状態、つまり慢性疼痛になってしまいます。
これは脊髄レベルで痛みを記憶してしまったという状態とも考えられます。
痛みを対応する際に、上記の感作の知識、存在を知っておくことは非常に重要です。
少なくともセラピストは感作に繋がらない痛みを生じさせない関わり(痛みに関与しない身体部位の運動や活動)を提供することが必要です。
間違っても患者さんに痛みを我慢してもらうという介入は回避せねばなりません。
では感作、特に中枢性感作が生じてしまっている場合はどう対応すべきでしょうか?
現在の慢性疼痛治療の第一選択は「運動」であること、そして患者教育や認知行動療法といった心理的アプローチも含めた患者主体の介入が推奨されています。
痛みを生じない、もしくは増悪しない身体部位を使った運動を動機付け、習慣化をサポートする専門家として身体面も認知心理面、そして社会的側面(環境)にも精通した作業療法士が果たせる役割は大きいと考えています。
次回、作業療法士のための痛み学⑤については神経障害性疼痛についてまとめていきます。

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