「作業療法士として患者さんの訴える痛みにどう対応していいのか分からない」
「作業療法士として痛みを訴える患者さんの生活をより良くしたい」
「作業療法士として痛みを理解、対応するためにどう勉強したらいいのか分からない」
臨床では痛みを訴える患者さんへの対応を求められます。
しかし僕の経験(20年以上前の学生時代と4年間の教員の経験)では作業療法士は卒前の教育課程において痛みに関する充分な教育を受けておらず、その対応は卒後の教育、自己研鑽に委ねられていると考えます。
作業療法は患者さんの健康と幸福を促進するため生活のあり方を支援します。
生活の中での痛みの有無が患者さんの健康と幸福を阻害する一要因であると考えると、作業療法士も痛みに関する知識とそれに対応する技術(少なくとも悪化させない)を研鑽する必要があると考えます。
作業療法士のための痛み学は連載形式で、痛みの理解とその対応について学べるように記事にしていきます。
今回、作業療法士のための痛み学①では痛みの種類について概説します。
痛みには大きくわけて器質的疼痛と非器質的疼痛があります。
器質的疼痛は侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分類されます。
侵害受容性疼痛は炎症や組織損傷によって生じた発痛物質が末梢の侵害受容器(自由神経終末)を刺激することによって生じる痛みです。
つねる、はさむ、ぶつける、切り傷、注射での痛み、歯痛など日常的に経験する多くの痛みがこれにあたります。痛みは局所的であるのが特徴です。
神経障害性疼痛は体性感覚神経の損傷や疾患の結果生じる痛みです。
これは身体組織への侵害刺激がないにもかかわらず、自由神経終末が自然発火している状態(過剰に興奮)の痛みです。まとめると傷ついた神経の、痛み刺激によらない、普通でない痛みです。
痛みは持続的で、日常では経験しない感覚で「走る」「刺す」「切れる」「焼ける」「締め付けられる」「じんじん」「チカチカ」といった表現で訴えられます。
非器質的疼痛(心因性疼痛)は身体に説明しうる器質的、機能的病変がないにも関わらず訴えられる痛みで、心理社会的疼痛、機能性疼痛症候群、中枢機能障害性疼痛とも呼ばれるものです。
痛み体験に基づく痛み行動を起こした場合に、本人にとって快反応に導く周囲の擁護的、同情的反応や経済的利得などが得られた場合、痛み行動が強化されます。
そして痛み体験の有無にかかわらず、快反応を得たい場合に疼痛行動が生じるという条件づけが生じた結果起こるものと考えられています。
臨床では上記にあげた疼痛が重複される形で表現されていることを念頭に対応する必要があります。
つまり生活動作の中での侵害刺激の有無、神経系の状態、痛みを訴える本人の捉え方や本人を取り巻く環境要因を評価し対応する必要があります。
作業療法士は心身ー作業ー環境といった3要素いずれにもアプローチできる存在です。
心身機能構造に働きかけるー作業のあり方・仕方に働きかけるー環境に働きかけることで痛みの軽減と生活の質の向上に貢献することができると考えます。
次回作業療法士のため痛み学②では侵害受容性疼痛を深掘りして、その理解と対応についてまとめていきます。
参考文献

- 作者: 松原貴子,沖田実,森岡周
- 出版社/メーカー: 三輪書店
- 発売日: 2011/05/30
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