気の乗らない業務、業務上のミスの上司への報告、資料作成、終業前の記録や業務処理などつい先延ばしにしたい誘惑にかられます。しかし先延ばしすることでかえって不安が増大します。そして長い目で見たときには仕事上、他者からの信頼を失う事態に至ることもあります。
先延ばししたいという思いと先延ばしの行動は、目の前のストレスをとりあえず避けたいという短期的な意思決定・行動選択の癖、思考の習慣(行動経済学でいう損失回避)とされています。短期的な意思決定は、感情優位な行動選択になる傾向があります。感情優位つまり辺縁系を使う素早い意思決定のため思考、視野が狭くなり短絡的な行動選択となり、長期的には後悔する結果になる場合があります。
狩猟採集生活をしてきた歴史、時間が長い人類は、進化上、目の前のストレス(肉食動物)に対して闘争or逃走という辺縁系優位の意思決定、行動選択をとる傾向が強いとされています。
一方で先延ばししない場合は理性的、長期的視点に立つ意思決定、行動選択です。前頭前野にさまざまな情報を集めてから、行動のレパートリーを選択、企画、実行します。時間がかかりますが熟考することで思考の柔軟性を発揮させて行動の選択肢を広げて、未来への可能性を拡大することが可能です。
したがって先延ばししないためには、感情の脳=辺縁系ではなく理性の脳=前頭前野を使う戦略が必要です。前頭前野を使う戦略は◉業務の仕方を変える、◉長期的視点での損得(目的、意味)を考えるというものがあります。
◉先延ばししたい業務の仕方の工夫
①15分単位でやるべき作業を区切って遂行する
②to doリストに今日やるべき業務を書き出し、終わったら線で消す
③やるべき業務の課題、工程を細かく分解し(チャンクダウン)できるところから始めてみる
◉一度立ち止まって先延ばししたい業務をしなかった場合とした場合の損益を考えてみる
例えば仕事上のミスの上司への報告。報告することで怒られるというストレスと回避したいとまず思いますが、報告が遅くなることで、事態はさらに悪化する、上司からの信頼を失うといった損失を考えると、損失回避の原理から先延ばししない選択を取ることができます。
狩猟採集生活をしていた時間が歴史上圧倒的に長く、それに適応、進化してきた人類は、そもそも先延ばしする傾向があるようです。ただ目の前のストレス、損失(肉食動物に捕食される)を回避すれば生きていけた狩猟採集時代の人間であれば、それで良かったのです。しかし今の時代(信頼や承認に基づく社会)を生きる人類は長期的視点に立った意思決定、行動選択をする、つまり先延ばしを回避する術を身につける必要があるようです。
以下参考文献です。

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