作業療法士は対象者さんの生活動作を再構築し社会参加を実現するために、身体ー環境ー作業の3つの側面から介入し問題解決を図っていきます。介入モデルにはには回復モデル、代償モデル、習得モデルがあり、適宜目的と状況に合わせてモデルを選択していきます。
特に急性期、回復期では回復モデルに基づいて患者さんの身体に直接接触して動きを支援する機会が多くあります。その際なぜその身体部位から、なぜその方向に、その範囲に、触れて動きを誘導、支援するのか解剖学、運動学、生理学、心理学など多様な学問に基づいて説明できる必要があると考えています。
さらに僕は基本的な考え方としてこちらが提供する接触、動きの刺激を患者さんの身体が受け入れてくれているかに基づいて実施しています。表情や言語的な応答の確認とともに、抵抗少なく追従する身体反応を探します。特に筋緊張が強い方、痛みがある方、不安が強い方などは上記の考えに基づいて最初の接触と動きの誘導を図っていきます。
接触や動きの誘導に抵抗を感じたら、それ以上の動きを求めず、抵抗の少ないもしくは追従する運動方向や身体部位(関節)に誘導のポイントを切り替えます。このプロセスを繰り返すことで、抵抗があった部位の抵抗が減弱したり可動性が拡大することがあります。
また骨から触るか、筋肉(軟部組織)から触るかもよっても反応が違います。過度な緊張を強いず、リラクゼーションを促す場合は骨ばっている身体部位から接触することにしています。骨張っている身体部位は基本的に体重を支える面として機能しているので外部の刺激に対して受け入れやすいと考えられます。一方で筋肉、軟部組織の多い身体部位(例えば腹部、胸、顔面、陰部など)への接触は情動反応を誘発しやすい傾向があると考えているため、はじめに接触する部位としては適さないと考え対応しています。
僕は身体接触、動きの誘導もコミュニケーションと考え相手に受け入れられる、伝わることを重視しています。受け入れらていないことは接触や動きに対する抵抗として患者さんの身体が教えてくれます。抵抗つまり受け入れてもらえていない反応は、効果的な学習を促すことが難しいと考えています。学習には円滑なコミュニケーションが欠かせません。言語でのコミュニケーションとともに、身体接触という非言語的コミュニケーションの感度、技術を高めることが作業療法士にも必要であると考えています。
以上の考えはキネステティクスを学んだことに基づいています。以下参考文献です。

看護・介護のためのキネステティク―上手な「接触と動き」による介助
- 作者: フランクハッチ,スザンネシュミット,レニーマイエッタ,Frank Hatch,Suzanne Schmidt,Lenny Maietta,沢口裕二
- 出版社/メーカー: 日総研出版
- 発売日: 2003/07
- メディア: 単行本
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