blueskycarp’s blog

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訓練拒否への対応③〜社会心理学の知見に基づいて〜

訓練拒否への対応③では社会心理学の知見に基づく対応をまとめていきます。  

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

 

  上記書籍は承諾の心理とその研究、人はどのような要因によって他者からの要求を受け入れるのかについて実証研究に基づいてまとめられた内容になっています。人は6つの原理〜①返報性、②一貫性、③社会的証明、④好意、⑤権威、⑥希少性〜に基づいて承諾しやすくなる傾向があることを示しています。

 

①返報性の原理

  俗に言うgive and takeで「与えることが人を動かす」という原理です。人は恩恵、親切を受けたらお礼をしなくてはならないと感じる傾向を持っています(たとえ嫌いな人でも)。まずは相手が望んでいることを与えることでこちらの要求を受け入れやすくなります。僕は「何かお手伝いすることはないですか?」「何かお困りのことはないですか?」と尋ねることから始めることが多いです。また拒否されたらまずは譲歩する、知覚のコントラスト(最初に大きな要求を提案してから、小さな要求を提示する)という方法も取り入れています。

 

②一貫性の原理

  対象者自らの言動、信念、思考、行動を首尾一貫したものにしようとする=言行一致しようとする原理。最初に小さな「YES」=コミットメントを引き出すことから関わりを持ちます。「ここにいてもいいですか?」「血圧を計らせてください」「1分だけ」「一回だけ」という声かけで小さなYESを積み重ねていきます。また対象者の価値観、信念、習慣との一貫性は歳をとるごとに強化される傾向もあり、その人の元来の思考、行動様式をラベリングして言語化すること(努力家、活動的な人)で、動機付けることもあります。

 

③社会的原理の証明

  人が自分の意志や決定に確信が持てない時、あるいは状況が曖昧で不確実な時、他人の行動を模倣しようとする原理。特に類異性、同じ境遇にある人を参考に行動選択する傾向があります。他患者の存在、ピアサポート、集団の利用、「多くの人が…」「皆さんにお願い、協力していただいてます」という動機付けが可能です。

 

④好意の原理

  好意を持つ相手ほど賛同したくなる原理。当然ですがセラピスト、関わりをもつ相手としてのハロー効果、第一印象も大事にした関わりが重要です。また類異性のある人、称賛を与えてくれる人ほど好意を持ちやすい、単純接触効果といった要素も日々の関わり、セラピーの中で自身の振る舞いを意識的、治療的に操作していくことが相手に受けれやすい状況を作っていくと考えています。また元々好意を抱いていた存在からの動機付け(子供、孫)を利用することも引き出しの中にいれておきます。

 

⑤権威の原理

  専門家の指示を仰ごうとする原理。パターナリズムです。僕は「主治医の先生にお願いされているのですが…」「医学書に書いてあるには…」といった表現で動機付けることもあります。

 

⑥希少性の原理

  手に入れにくいものほど求めたがる原理。数量限定、期間限定という言葉に動機付けられます。また禁止されると求めたがるというのも同じ原理に基づきます。ただこの原理は臨床場面でのうまく活用したことが僕はありません。

 

  以上、拒否されている対象者にこちらの思いや提案を受け入れてもらう、動機付けるためのヒントを社会心理学、承諾の研究からまとめてみました。ただ個人の能力、資質だけでは当然限界があります。一人で抱え込まず周りに相談し、対象者を取り巻くチームで対応することが大事であると考えています。