blueskycarp’s blog

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訓練拒否への対応②〜行動経済学の知見に基づいて〜

  療法士であれば誰もが経験する対象者の訓練拒否への対応について、今回は行動経済学の知見に基づいて、その理解と対応についてまとめます。

 

 そもそも経済学は人々が、いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのような方法で「意思決定」「行動選択」するのかを解明する学問とされています。

 

  その中で伝統的な経済学は長期的な意思決定・行動選択を、行動経済学は短期的な意思決定・行動選択の理由を解明する学問で、特に不確実性の下での意思決定・行動選択には共通したクセ、バイアスがあることを明らかにしてきました。

 

  訓練拒否も対象者が障害を抱えた中で比較的短期的な意思決定・行動選択と考えることができます。

 

  そして訓練拒否の背景にある対象者がとるバイアスとして現状維持バイアスが考えられます。

 

  現状維持バイアスは「今を優先する思考、行動選択」とされています。

 

  特に認知機能の低下した対象者は、未来の予測に基づいた長期、合理的な判断能力の低下により、短期的、今現在感じている生理的欲求、安全欲求を優先させた意思決定・行動選択を選ぶというバイアスがあると考えられます。

 

  その現れとして訓練拒否という選択になると考えます。

 

  したがって現状維持バイアスが背景にある訓練拒否への対応としては

 

①今現在の欲求は何かを評価し、それを満たす関わりを提供する

 

②(現状維持バイアスを外すために)未来を見通せる情報の提供、つまりイメージしやすい状況づくり(動画などでこれから実施する訓練や活動の場面を提示する)といった対応が考えられます。

 

  また経済行動学が明らかにしたバイアスに基づく対応として、損失回避(〜しないと〜を失う)に基づく情報の提供、社会的選考(利他性、互恵性)に基づく対応が考えられます。

 

  前者は何かを得る可能性よりも何かを失う可能性に対して人は敏感になり、それを回避しようと意思決定・行動選択するバイアスです。

 

  訓練をしないことで、現状の心身、生活状態がさらに悪化、脅かされる情報を提供するという戦略になります。やや脅迫的な対応になるのであまり現実的でないかもしれません。

 

  後者、社会的選考とは、簡単に言えば「誰かのために…」に基づく意思決定・行動選択です。これは拒否のある対象者に対して家族の存在に基づく動機付けが対応として考えられます。この対応は臨床でよく実践されていると思われます。

 

  以上、行動経済学に基づく理解と対応を提案してみました。次回は社会心理学に基づく訓練拒否の理解と対応についてまとめてみたいと考えています^_^

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者

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